遺留分侵害額請求権(旧、遺留分減殺請求権)
遺留分侵害額請求権(旧、遺留分減殺請求権)
遺留分減殺請求権は法定相続人が遺留分を侵害された場合、その侵害された分の額について取り戻しを請求できる権利のことです。遺留分減殺請求権行使の要件として、遺留分が侵害されていることが必要です。
『遺留分侵害額請求権』と『特別の寄与』の制度概要
■遺留分侵害額請求権
民法改正により、従来の「遺留分減殺請求権」の効果が変化し、遺留分侵害額分の金銭債権を発生させるという債権的効果をもつ「遺留分侵害額請求権」となりました(新1046条1項)。つまり、遺留分権利者及びその継承人が、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金額の支払いを請求できることとなったのです。
もう少し具体的にいえば、㋑いわゆる「相続させる」遺言や、㋺相続分の指定による遺産の取得についても遺留分侵害額の請求の適用があることが、明確にされたということです。
そして、遺留分侵害額に相当する金銭債務を、受遺者等がすぐには支払えない場合が想定されるため、例えば遺産が不動産のみのような場合には、『受遺者等の申し立て』により、裁判所が相当の期限を許与できる制度も新設されました(新1047条5項)。
■遺留分を算定するための財産の価格の算定方法
「遺留分を算定するための財産の価格①」
=相続財産(遺贈対象含む) + 「贈与*」された財産の価額 - 相続債務
*1.相続人に対する「贈与」の場合は、相続開始前10年間にされ、かつ特別受益にあたるものに限られる(新1044条3項、同上1項前段)。なお、相続人以外の者に対する「贈与」の場合は、原則として相続開始前の1年間にしたものに限られる。
*2.負担付「贈与」の場合は、贈与額から負担額を控除した額とする(新1045条1項)
*3.不相当な対価による有償行為がされており、加害の認識がある場合には、負担付「贈与」とみなして計算する(新1045条2項)。
■遺留分の帰属及びその割合(新1042条)
遺留分権利者の「遺留分額②」
=「遺留分を算定するための財産の価格①」×1/2 (又は相続人が直系尊属のみの場合:1/3)× 各相続人の法定相続分
■遺留分侵害額の算定方法
遺留分侵害額
= 遺留分権利者の「遺留分額②」(最低限取得できるべき額*)
- 遺留分権利者の特別受益の額(戻し免除は考慮しない)
- 遺留分権利者が遺産分割において(具体的相続分により)取得すべき財産の価額(但し、寄与分は考慮しない)
+ 遺留分権者が法定相続分(相続の指定があれば指定相続分)により 承継する相続債務の額
*新1042条~同1045条に基づき算定する
■特別の寄与制度
民法改正により、被相続人に対して、無償で療養看護その他の労働を提供し、これにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした親族(相続人、相続の放棄をした者、欠格又は排除により相続権を失った者を除く。以下「特別寄与者」という。)は、相続が開始した後、各相続人に対して、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(「特別寄与料」という。)の支払いを請求できるようになった(新1050条1項)。
■特別寄与の手続きと権利の行使期間
特別寄与料の支払いについて、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます(新1050条2項)。
そして、この処分請求は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始時から1年以内にしなければなりません(新1050条2項但し書)。
(2020/08/24 文責:山田憲治)