滅失登記とは?自分で行う方法と注意点も解説

相続

滅失登記とは

建物を取り壊す際は、建物が無くなったという事実を記録しなければいけません。

法務局に申請して建物が無くなった事実を記録する行為は、「滅失登記」と呼ばれています。

「相続した建物を取り壊すとき、どのような手続きが必要なのだろうか?」「生前に被相続人が住居を取り壊していたけれど、土地だけ引き継いでよいのだろうか?」などという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、滅失登記の概要、自分で滅失登記を行う方法と注意点などについて解説します。

滅失登記とは

相続のとき土地・建物を被相続人から引き継いだ場合はもちろん、建物を取り壊すようなときも登記は必要です。

滅失登記の概要、滅失登記が必要なケースについて説明します。

(1)滅失登記の概要

滅失登記とは、建物が取り壊されて無くなったという事実を記録する登記です

建物の登記は建物構造・所有者等の状況が客観的にわかるよう記録されています。

建物を取得した場合と同様に、取り壊された状況も記録しなければいけません。

被相続人から建物を引き継いだときも取り壊したときも、当該建物の所在地を管轄する地方法務局に申請する必要があります。

なお、相続した建物を相続人が取り壊した場合、相続登記を経ずに建物の滅失登記が可能です。

(2)滅失登記が必要なケース

滅失登記は火災が発生し、建物が焼失したときなどに申請が必要です

また、次のようなケースでも滅失登記を申請しなければいけません。

  • 相続で建物を取得後、引き継いだ相続人が建物を取り壊す場合
  • すでに存在しない建物が、いまだ登記簿に記録されている場合

すでに存在しない建物が、いまだ登記簿に記録されている場合とは、被相続人が生前住居を取り壊したにもかかわらず、滅失登記をしないまま亡くなったという状況等が該当します。

滅失登記をしないとどうなる?

自分の所有している建物が無くなったなら、滅失登記の申請が必要です。滅失登記を行わないと次のような事態が想定されます。

  • ペナルティを受ける可能性がある
  • 固定資産税を支払う義務が残る
  • 土地の有効活用に支障が出る

それぞれについて説明します。

(1)ペナルティを受ける可能性がある

建物を取り壊した後、1ヶ月以内に滅失登記を申請しないと、10万円以下の過料に処される可能性があります

法律で「建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人」が、「その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。」と規定されています(不動産登記法第57条)。

それにもかかわらず「申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったとき」、罰則を受けるケースもあるので注意が必要です(同法第164条)。

滅失後1ヶ月以内という短い期間で申請を行わなければいけません

仕事や他の手続きに時間をとられ、なかなか申請する時間をとれないときは、自分以外の人(親や兄弟、専門家等)に頼むとよいでしょう。

(2)固定資産税を支払う義務が残る

すでに建物が取り壊された後に滅失登記をしないと、取り壊された事実を地方自治体が知らずに、継続して建物の固定資産税が課される可能性もあります

また、滅失登記を行えば、即座に固定資産税が課税されなくなるわけではありません。

建物の固定資産税が課税されなくなるのは、滅失日の属する年の翌年度からであることに注意しましょう

つまり、滅失日の属する年は4回分(第1期〜4期まで)、固定資産税を納付する必要があります。

滅失登記後は法務局から都道府県税事務所に通知され、当該事務所の家屋評価担当職員が、建物の滅失を確認します(相続人等の立会いは原則として不要)。

(3)土地の有効活用に支障が出る

被相続人の建物を取り壊しても滅失登記が行われていないと、引き継いだ土地の有効活用が難しくなります

例えば、建物を取り壊した後に、引き継いだ土地を売却したいとき、土地上に建物登記の記録が依然として存在しているため、なかなか買い手がつかないおそれもあります。

なぜなら、建物の登記が残った状態のままでは、買主が住宅ローンを利用するとき、金融機関の審査に通らない可能性が高いからです。

土地購入後に建物をたてる買主は、住宅ローンを利用するケースがほとんどなので、住宅ローンを利用できない土地は敬遠される傾向があります。

また、売却ではなく建物を建て替えたいときも、登記上、建物が依然として存在している状態なので建築許可は下りません。

滅失登記の申請と必要書類について

被相続人の建物を引き継いだ相続人が建物を取り壊した後、1ヶ月以内に滅失登記を申請しなければいけません(共有者がいても単独で申請可能)。

滅失登記に必要な書類を収集後、速やかに取り壊した建物の所在地を管轄する法務局へ申請しましょう。

(1)滅失登記の申請の流れ

滅失登記の申請手順は次の通りです。

  1. 申請する法務局を調べ、登記の有無を確認
  2. 建物滅失登記申請書を作成する
  3. 法務局に滅失登記の申請書類を持参または郵送で提出する
  4. 登記完了証を受け取る

法務局の窓口で申請する場合、業務時間内(平日:8時30分〜17時15分)に訪問し、申請手続きを済ませましょう。

ただし、法務局で申請を済ませたからといって、すぐに登記完了証が受け取れるわけではありません。

申請〜登記完了まで通常1週間〜10日程度かかってしまいます。

(2)滅失登記の必要書類

滅失登記申請書を準備して記入するほか、下表の通り、取り壊す建物や被相続人に関するさまざまな書類が必要となります。

必要書類 内容
滅失登記申請書 法務局窓口やホームページから取得可能、取り壊した建物に関する登記情報(建物所在・構造・床面積等)を記入

取り壊した建物の登記簿謄本

・各種図面

取り壊し前の建物の状態を確認するために必要、登記簿謄本・各種図面は法務局の窓口等で取得可能
建物滅失証明書 「取り壊し証明書」とも呼ばれる、建物を取り壊した解体業者等が証明する書類
取り壊した建物の周辺地図 調査担当職員が現地確認するときに必要
解体業者の資格証明書

建物取り壊しを請け負った解体業者が法人または個人の場合、次の書類を準備する

・法人:法人代表者の資格を証する書類および法人代表者印鑑証明書(申請書に会社法人番号を記載すれば、証明書類添付不要)

・個人:個人の印鑑証明書

住所変更の証明書類 住民票や戸籍謄本等が該当、取り壊した建物の所有者の住所と登記事項証明書とが異なる場合に必要
氏名変更の証明書類 戸籍謄本や除籍謄本等が該当、現在の氏名と登記事項証明書の氏名とが異なる場合に必要
被相続人との相続関係の証明書類 取り壊した建物の所有者の戸籍謄本や除籍謄本、申請者の戸籍謄本等が必要
委任状 建物を取り壊した所有者が直接申請できず、自分以外の人をたてる場合に必要

滅失登記に関するよくある質問

滅失登記にはさまざまな書類が必要となり、自分で登記申請をした経験のない方は、申請手続きに手間取る可能性があるでしょう。

滅失登記に関するよくある疑問点を取り上げ、それぞれについて回答していきます。

(1)滅失登記の申請を誰に任せられる?

滅失登記の申請をするのは、基本的に建物所有者(相続で建物を引き継いだ場合は相続人)です

ただし、委任状があれば親族等に申請を任せても構いません。

専門家に任せたいなら「土地家屋調査士」への依頼も可能です。

土地家屋調査士とは、不動産の表示に関する登記につき、必要な土地または建物の調査や測量を行う専門家です。

「登記の専門家は司法書士である」と考えている方は多いかもしれません。

しかし、滅失登記申請手続きの代行は土地家屋調査士しか行えません。

まずは表題登記の専門家である土地家屋調査士に滅失登記を相談し、代行を任せた方がよいと感じたら、契約を締結しましょう。

(2)滅失登記の費用はどれくらいかかるの?

自分で滅失登記を行う場合、基本的には約1,000〜3,000円かかります

主に取り壊した建物の登記事項証明書(480〜600円)、各種図面等(450円)、印鑑証明書(390〜450円)が必要です。

なお、滅失登記には登録免許税・その他の税金はかかりません。

ただし、次のケースでは追加費用(調査費用)がかかるので注意しましょう

  • 相続発生時、戸籍調査が必要となった:約3〜5万円
  • 解体証明書がみつからない:数万円
  • 分合筆で所在変更が必要:約1〜2万円
  • 登記上の住所が異なる:約1〜2万円
  • 広大な借地上の建物を滅失登記する必要がある:約1〜2万円
  • 取り壊した建物に抵当権が残っていた:数万円

取り壊した建物の所有者は、ケースによって予想外の出費を要する可能性があります。

なお、土地家屋調査士に滅失登記を依頼した場合、約3〜5万円の報酬を支払う必要があります。

(3)滅失登記の取り壊し証明書がみつからない場合はどうすればいい?

滅失登記の申請前に建物滅失証明書(取り壊し証明書)がみつからないときは、「上申書」を作成し、実印の押印後、印鑑証明書も添付したうえで法務局に提出しましょう

滅失建物の所有者(相続人)が不注意で建物滅失証明書を破棄したケースや、解体業者の倒産により証明書の取得ができないケースも想定されます。

建物滅失証明書の代わりに上申書を作成すれば、支障なく滅失登記の申請が進められます。

上申書には次の項目を記載しなければいけません。

  • 取り壊した建物が所在していた住所
  • 家屋番号
  • 種類(居宅や店舗に使っていた等を明記)
  • 構造(階数、木造や鉄骨造等)
  • 床面積
  • 解体証明書を提出できない理由

建物滅失証明書がみつからず、上申書の作成に不安を感じているなら、土地家屋調査士に相談した方がよいでしょう。

まとめ

滅失登記の概要、自分で滅失登記を行う方法と注意点などについて解説しました。

滅失登記を行うときは、いろいろな書類を収集しなければならず、申請期限も滅失後1ヶ月以内と短期間となっています。

滅失登記の申請期限が経過するとペナルティを受ける可能性もあるので、迅速に準備や手続きを進めていきましょう。

滅失登記の申請に手間取っているときや、滅失登記に関して不明点・疑問点があるときは、無理をせず、土地家屋調査士に相談することをおすすめします。

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