不動産相続の相談先をケース別に紹介
「不動産を相続する手続きが煩雑でわかりにくい」「故人から引き継いだ不動産の活用方法が知りたい」などと思い、誰かに相談したいと考えている方は多いでしょう。
しかし、親戚や友人・知人に相談しても有効なアドバイスが得られるとは限りません。そんなときは各問題に精通した専門家に相談しましょう。
この記事では、不動産相続を相談する必要性や、ケースに応じた相談先を紹介します。
不動産相続を相談する必要性
被相続人(故人)の所有していた不動産の相続手続きは、相続人だけで進められます。
しかし、手続きの方法や引き継いだ不動産の活用方法がよくわからないと、トラブルの発生や不動産管理に大きな負担となる事態も想定されます。
(1)不動産相続手続きを自分で進めるのは難しい
相続人だけで不動産相続を行うと、予想外のトラブルで思うように手続きが進まない状況となるかもしれません。
被相続人の法定相続人が複数存在する場合、不動産を誰が相続するかで揉める場合もあるでしょう。
なかなか相続人同士の話し合いがまとまらず、相続手続きに時間がかかる可能性もあります。
一方、被相続人の法定相続人が1人または2人だけなら、相続人同士の揉め事は発生しないかもしれません。
しかし、不動産の名義変更(相続登記)等の必要書類の収集、申請に手間取るおそれがあります。
不動産相続の様々なトラブルを未然に回避するためには、相続発生後、速やかに専門家へ相談しておいた方がよいでしょう。
(2)ケースに応じた相談先
不動産を相続するときは不明点・疑問点が生じる他に、相続人同士で揉めてしまうケースもあります。
不動産相続に関して悩みがあれば、ケースに応じて次のような企業・専門家へ相談してみましょう。
- 相続不動産の活用方法がわからない:売却したときは不動産仲介会社、マンション経営等の引継ぎなら不動産管理会社、土地活用ならハウスメーカー
- 不動産の相続手続きに支障が出た、手続きがよくわからない:相続人同士が揉めているときは弁護士、不動産相続の諸手続きがわからないなら司法書士、相続税の計算や申告・納付を手伝ってもらいときは税理士
その他、公的機関でも無料で相談を受けられる場合があります。
相続した不動産の活用・売却を相談したい
相続した不動産を有効活用したいなら、不動産を数多く扱ってきた不動産仲介会社・不動産管理会社・ハウスメーカーに相談してみましょう。
引き継いだ不動産の状況に応じた相談先を紹介します。
(1)相続した不動産の売却は不動産仲介会社
「相続した不動産を売却したい」「被相続人の財産が不動産だけなので、複数の相続人に平等に分けられない」というときは、不動産仲介会社に売却を相談してみましょう。
引き継いだ相続人に持ち家があった場合、相続不動産を持て余す事態が想定されます。
また、相続不動産を現金化しないと、各相続人へ均等に遺産を分配できないケースもあるでしょう。
ただし、相続人だけで買い手を探すのは非常に難しく、適正な価格で売り出さないと買い手は付かず速やかに現金化が図れません。
不動産仲介会社に相談すれば、相続不動産の適切な売却方法や、早く買い手の見つかる方法の説明が受けられます。相談するだけなら無料なので安心です。
相談のうえで不動産仲介会社に売却のサポートを依頼すれば、以下のような対応を任せられます。
- 不動産仲介会社のサイト等に売却不動産を掲載し、買い手を募る
- 不動産を様々な角度(最寄駅からの距離・面積・築年数・劣化損傷程度・周辺環境等)から調査、売却価格の査定を行う
- ケースによっては不動産会社が直接買い取る場合もある
相談するときは複数社(なるべく3社以上)を対象として、売却実績・営業姿勢・売却方法・売却査定価格の比較・検討をします。
そのうえで、最も自分のニーズに合った不動産仲介会社へ依頼するとよいでしょう。
(2)マンション経営等の引継ぎなら不動産管理会社
被相続人が生前にマンションやアパートを経営していて、それを引き継ぎたいときは、被相続人の不動産を管理していた不動産管理会社に相談します。
その場合は、被相続人と管理会社が以前からどのようなやり取りをしてきたのか確認し、不明な点があれば担当者から詳しく説明を受けましょう。
相談する際に費用はかかりません。
長年被相続人の不動産を管理してきた会社であれば、これからも安心して管理を任せられます。
なお、被相続人が利用していた管理会社を無理に利用し続ける必要はなく、より入居率の向上が期待できる管理会社に変更してもかまいません。
(3)土地を相続したときの活用についてはハウスメーカー
土地を相続したものの、どのように活用したらよいかわからないときは、ハウスメーカーに相談してみましょう。
土地の活用はマンション等の経営の他、駐車場・トランクルーム・店舗・オフィスビル経営等、多岐にわたります。
しかし、引き継いだ土地の面積や立地を踏まえ、周辺環境等に合わせた活用をしなければ、思うように収益があげられない可能性もあります。
ハウスメーカーに相談すれば、土地の状況を勘案しつつ、最適な土地活用法を提案してもらえるでしょう。
なお、ハウスメーカーへの相談はもちろん、基本的に土地活用の提案書(基本計画図)・見積書・事業計画書の提示まで無料となります。
土地活用の場合も相談先を複数選んだ後、各ハウスメーカーの土地活用の提案内容を比較・検討したうえで、最も自分のニーズに合ったハウスメーカーへ依頼しましょう。
不動産相続の手続きやトラブルを相談したい
法定相続人が複数存在する場合、遺言書で不動産を引き継ぐ人が指定されていないなら、相続人の間で遺産分割協議を行って、不動産を相続する人を決定する必要があります。
ただし、不動産を相続する人が決まるまで、または相続する人が決まってからの手続きで、トラブルが発生するケースもあります。
(1)相続人間のトラブルが起きたら弁護士
法定相続人の間で、不動産の相続トラブルが発生した、または発生する可能性が高いときは弁護士に相談しましょう。
法定相続人が多い場合や、相続人同士の仲が悪い場合、相続不動産をどうするかで揉めてしまい、相続手続きが進まなくなるおそれもあります。
しかし、弁護士へ事前に相談していれば揉めた場合の解消方法や、問題解決のための調停・裁判手続きのアドバイスが受けられます。
弁護士に相談する際の相談料は、1回30分で5,000円が相場です。
ただし、初回相談を無料で受け付けている法律事務所もあります。
相談のうえで弁護士に不動産相続トラブルの解決を依頼すれば、以下のような対応を任せられます。
- 相続人の間の紛争解決:相手方との協議、調停・裁判手続き、依頼者側に有利な主張や証拠の提出等
- 相続手続きに関する申立て等の代理申請:相続放棄の申立てや遺言書検認の申立て等
- 相続に関する各種手続き:法定相続人・相続財産調査、遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻し等
ただし、弁護士を代理人とした場合は弁護士費用がかかる点に注意しましょう。
(2)不動産相続の名義変更等の手続きなら司法書士
相続人の間で不動産相続を巡るトラブルが起きる可能性はほとんどないけれど、不動産に関する手続きがよくわからないときは司法書士に相談するとよいでしょう。
司法書士は不動産の名義変更(相続登記)の専門家です。
司法書士に相談すれば、相続不動産の手続きの進め方や不動産の名義変更などについて、わかりやすくアドバイスしてもらえるでしょう。
司法書士に相談する際の相談料は1回30分で5,000円が相場です。
ただし、相談料自体を受け取らないところもあります。
(3)相続税の計算や申告・納付なら税理士
相続財産を調査したところ相続税が発生するとわかったら、税の専門家である税理士に相談してみましょう。
課税価格の合計額(正味の遺産額)を基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数)から差し引き、課税遺産総額が0円とならなければ、相続税を税務署に申告・納付する必要があります。
税理士に相談すれば、節税のために不動産の相続税評価額を下げる方法(特例の利用等)、申告・納付のアドバイスが受けられます。
税理士に相談する際の相談料は1回30分で5,000円が相場です。
初回相談は、無料で応じてもらえることもあります。
相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内なので、自分で申告する余裕のないときは税理士に依頼した方がよいでしょう。
その他の相談先について
無料で不動産相続に関する相談をしたいなら、法テラスや公的機関も利用できます。
ただし、利用条件・利用時間や相談回数が限定されている場合もあるので注意しましょう。
(1)法テラスでの相談
法テラスの正式名称は「日本司法支援センター」で、47都道府県すべてに地方事務所があります。
不動産相続トラブルの他にいろいろな法律問題に悩む人が、気軽に法律相談を受けられる相談窓口です。
相談員は法テラスと契約している弁護士等が対応します。
ただし、法テラスの無料相談を受けられるのは、収入・資産が一定の基準以下の方々です。
相談時間や回数も限定されます。
- 相談時間:1回30分
- 同一の問題につき3回まで無料相談可能
- 原則として事前予約が必要
(2)市区町村役場での相談
市区町村役場には、相続に関する無料相談を受け付けているところがあります。
無料相談を担当するのは主に弁護士(当番制)で、市区町村の職員ではありません。
無料相談は当該市区町村の住民なら、基本的に誰でも利用可能です。
ただし、無料相談に関して次のような制約を設けているところもあります。
- 相談時間:1回30分
- 事前予約:必要
- 相談日:「無料相談は平日の〇曜日〜〇曜日のみ」と指定
- 利用回数:「相談者1人につき、〇か月で1回限定」
なお、市区町村役場の開庁時間以外の相談は受け付けていないので注意しましょう。
(3)法務局での相談
相続人自身で不動産相続のための手続きや、必要書類を作成したいならば法務局に相談しましょう。
各地方法務局では不動産の名義変更(相続登記)に関する相談を受け付けています。
名義変更の申請方法・書類への記入方法等の説明を無料で受けられます。
ただし、遺産分割の方法や相続人の揉め事に関する相談はできないので注意しましょう。
まとめ
不動産相続を相談する必要性や、ケースに応じた相談先を紹介しました。
不動産相続でトラブルが発生すれば、相続手続き全体が進まなくなる可能性もあります。
不動産相続に関する不明点や疑問点がある場合や、他の相続人と話し合いがうまくいかない場合は、速やかに専門家へ相談することをおすすめします。