田舎の土地を相続するメリットとデメリット・注意点も解説

被相続人の土地を相続することになり、「田舎の土地なので相続しても持て余してしまう」「田舎の土地は相続したくなかった」などと、悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
被相続人の所有していた土地を相続すれば、土地を有効活用できたり、資産価値の向上も図れたりする場合があります。
しかし、土地の状況によっては手放した方が良いケースもあるでしょう。
この記事では、田舎の土地を相続する3つのメリットとデメリット、いらない田舎の土地を相続した場合の対応方法について解説します。
田舎の土地を相続する3つのメリット
田舎の土地を相続するメリットは主に次の3つです。
- いろいろな土地活用が可能
- 資産価値が向上する場合もある
- 田舎の土地は相続税等の負担が少ない
それぞれのメリットについて説明します。
(1)メリットその1・さまざまな土地活用が可能
相続した田舎の土地の周辺環境をよく確認したうえで、さまざまな土地活用ができます。
- そのまま土地を利用する:相続したのが農地の場合、農家を引き継ぎたいならそのまま利用が可能
- 土地を貸与する:相続したのが農地の場合、農業を行いたい人に貸与が可能
- 駐車場等にする:相続した田舎の土地の近くに行楽地・観光地があると、駐車場の需要は高まる場合がある
田舎の土地とはいえ現状を踏まえて活用すれば、安定した収入が得られる可能性もあります。
(2)メリットその2・資産価値が向上する場合もある
たとえ現在は周りに何もない田舎の土地であっても、将来的に地価が上昇すれば、相続財産としての価値を高められ、土地を担保に新たな融資を受けられることでしょう。
また、地価が上昇したタイミングで田舎の土地を売却すれば、高値で取引できる可能性があります。
以下のような地価が上昇する要因を見極め、土地活用を行いましょう。
- 都市開発が行われる:住みやすい環境が整えられると、周辺地域へ住民が流入し、アパート・マンションや戸建て住宅が建築され、土地の需要が高まる
- 交通アクセスが改善された:田舎の土地の周辺で高速道路の整備や駅が建設されると、人や物の流れが活発化する
- 土地が観光地化された:インバウンド需要等で外国人をはじめとした観光客が訪れ、田舎の土地の周辺が観光地化されるケース。観光が盛んになると宿泊地を必要とするので土地の需要は高まる
(3)メリットその3・田舎の土地は相続税等の負担が少ない
田舎の土地を相続したとき、税負担が軽減される点はメリットです。
田舎の土地を相続する場合、相続登記は必要となるものの不動産取得税がかかりません。
その他、登録免許税の税率は原則として0.4%(不動産売買で取得した場合は2%)に抑えられます。
また以下のケースでは登録免許税が免税されます。
- 相続で土地を取得した個人が、相続登記を済ませないまま死亡し、その亡くなった個人名義の相続登記を申請する場合
- 相続した土地の所有権移転登記または表題部所有者の相続人が、所有権保存登記を行うとき、土地の価額が100万円以下だった場合
その他、被相続人が住居に利用していた土地等である場合、一定の要件を満たすと、土地の部分の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」も利用が可能です。
本特例をうまく利用すれば相続税の負担軽減に役立つことでしょう。
田舎の土地を相続する3つのデメリット
一方、田舎の土地を相続するデメリットは主に以下の3つです。
- 田舎の土地の固定資産税は継続的に支払う必要がある
- 田舎の土地の管理責任が伴う
- 田舎の土地の売却・活用が難しい場合もある
それぞれのデメリットについて説明します。
(1)デメリットその1・田舎の土地の固定資産税は継続的に支払う必要がある
田舎の土地の相続後は「固定資産税」がかかってしまいます。
どのくらいの固定資産税がかかるのかは「固定資産税評価額×1.4%」で計算できます。
固定資産税評価額によっては毎年重い負担となる可能性もあるので注意が必要です。
例えば固定資産税評価額が300万円の場合、固定資産税は以下の通りです。
固定資産税評価額300万円×1.4%=42,000円
4万2,000円を納税する必要があります。
なお、「固定資産税課税明細書」が毎年送付されるので、具体的な納税額がすぐにわかります。
(2)デメリットその2・田舎の土地の管理責任が伴う
相続した田舎の土地がたとえ相続人の自宅から遠方にあっても放置してはいけません。
管理を行わずに放置すると以下のような深刻な事態が想定されます。
- こまめに除草作業をしないと、草木が隣の家を浸食してしまう
- ゴミが不法投棄され、悪臭や害虫・害獣が発生する
- 土地に建物が残っていると老朽化で倒壊したり、放火や不審人物が勝手に住んだりして、地域の治安が悪化する 等
相続した土地周辺の住民が多大な迷惑や損害を受けるおそれもあるでしょう。
土地の相続人は被害者から管理責任を問われ、損害賠償を請求される可能性があります。
(3)デメリットその3・田舎の土地の売却・活用が難しい場合もある
田舎の土地の近くに行楽地・観光地がない、今後地価が上昇する気配もないという場合、田舎の土地の売却や賃貸が難しくなる可能性もあります。
また、相続人が田舎の土地を直接利用しないならば、放置される状況になるかもしれません。
もし「田舎の土地を相続すれば持て余す事態になってしまう」と不安を感じたら、別の方法で対応した方が良いでしょう。
いらない田舎の土地を相続した場合の対応方法
「田舎の土地を相続しても有効な活用は難しい。」「田舎の土地を相続したけれど後悔している。」と感じたなら、冷静に今後の対応方法を検討しましょう。
土地問題を解消する主な制度を紹介します。
(1)相続放棄を行う
被相続人の相続財産が田舎の土地や建物しかない場合、「相続放棄」を検討してみましょう。
相続放棄は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述を行います。
申述は自己のため相続の開始があった事実を知ったときから3か月以内に行わなければいけません。
相続放棄の申述書・申述人の戸籍謄本・被相続人の住民票除票または戸籍附票、収入印紙800円分・連絡用の郵便切手等を提出します。
申述が認められれば、被相続人の財産についての権利・義務すべてを放棄できます。
ただし、以下のような点に注意が必要です。
- 被相続人の田舎の土地を含め、相続財産のすべてを相続できなくなる
- 相続放棄をすると、他の相続人の相続割合や相続順位に変動が生じる可能性もある
相続放棄をすれば他の相続人にも影響が生じます。
例えば、被相続人の法定相続人が子1人の場合、その子が相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人に繰り上がります。
子が前もって兄弟姉妹に相続放棄を告げていないと、予想外の事態に兄弟姉妹が困惑する可能性もあるでしょう。
相続放棄は放棄をしたい人が単独で申述できますが、申述前に放棄の影響を受ける関係者と相談しておくことをおすすめします。
(2)田舎の土地周辺の事情に合わせた売却・活用を行う
田舎の土地周辺の事情を踏まえ、今後土地をどのようにするか検討してみましょう。
例えば以下のような活用方法が考えられます。
- 近隣の農家が農地を広げたいと考えている:農地の売買契約を締結し、農業委員会へ売買許可申請を行い、所有権移転登記を行う
- 田舎の土地周辺に教育施設や研究所等ができる:農地であれば宅地化して売却したり、アパートやマンション等を建て賃貸したりする
一見、何もないような田舎の土地でも購入希望者はいないか、大規模な開発(建設)計画が持ち上がっていないか等を、慎重に調査してみましょう。
(3)相続土地国庫帰属制度を活用する
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地の所有権・管理責任を国が引き取る制度です。
田舎の土地を相続したものの土地の管理は難しいと判断した場合、国の管理にして土地の再利用を促し、新たな所有者に活用してもらった方が良いでしょう。
本制度は田舎の土地を管轄する都道府県の法務局・地方法務局が申請先です。
申請するときは、承認申請書・審査手数料(土地一筆当たり14,000円の収入印紙)の他、土地の図面や写真・申請者の印鑑証明書等を提出します。
申請後、法務局担当官による書面調査・実地調査が進められ、法務大臣・管轄法務局長の承認を受けたら負担金(20万円〜)の納付も必要です。
田舎の土地を相続する場合の注意点
田舎の土地を相続したときは、気を付けなければいけない点があります。
田舎の土地をどうするか悩んでいるなら、専門家のアドバイスを受けつつ、解決を図っていきましょう。
(1)相続登記が義務化されている
相続した田舎の土地は相続登記(名義変更)を行う必要があります(不動産登記法第76条の2第1項)。
登記手続きを行わないままだと、田舎の土地を引き継いだ相続人がペナルティを受ける可能性もあるでしょう。
登記手続きの期限はケースによって以下の通りとなります。
- 2024年4月1日以降に田舎の土地を相続した:相続で不動産取得を知った日から3年以内
- 2024年4月1日以前に田舎の土地を相続したが未登記:原則として2024年4月1日から3年以内
正当な理由がないにもかかわらず登記手続きを済ませないと、10万円以下の過料が科される可能性もあります(不動産登記法第164条第1項)。
また、相続した田舎の土地を買主へ売却するとき、事前に登記を済ませておかないと、売却手続きが円滑に進められなくなるので注意しましょう。
(2)田舎の土地の相続に悩んだら専門家へ相談しよう
田舎の土地相続に関する悩みは、ケースに応じて以下のような士業専門家に相談するとよいでしょう。
- 複数の相続人がおり、田舎の土地を誰が相続するかでトラブル発生:弁護士に相談し、依頼すれば弁護士に相手との交渉や、調停・裁判を任せられる
- 相続登記の手続きがよくわからない:司法書士に相談し、委任すれば登記手続き全般を委任可能
- 田舎の土地にかかる税金が不安だ:税理士に相談すれば、かかる税金の正確な算定や減税に関する特例措置のアドバイスを受けられ、相続税の申告手続きの代行を依頼することも可能
田舎の土地相続に関する相談だけなら、各地方自治体が提供する無料相談サービス(弁護士・司法書士が当番で対応)の利用もできます。
まとめ
相続が発生したら、「田舎の土地をそのまま相続しても大丈夫なのか?」「相続放棄や相続土地国庫帰属制度を利用するべきか?」等を慎重に検討しましょう。
自分だけで悩まずに、弁護士や司法書士のような士業専門家へ相談すれば、有益なアドバイスを得られる可能性があります。