相続人調査とは?必要性や方法について解説

被相続人が亡くなり相続が発生した際、「わざわざ相続人が誰かを調査する必要はあるのだろうか?」「相続人は私と子どもだけなので調査しなくても問題ない」などと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相続人調査を行わないと面識のない相続人が突然現れて相続財産を要求されるなど、想定外の事態が発生するおそれもあります。
この記事では、相続人調査の必要性や調査の方法などについて解説します。
相続人調査とは
相続人調査は相続発生後、法律で調査が義務づけられているわけではありません。
しかし、相続手続きを行うとき、トラブルもなく円滑に進めていくための必要な作業といえます。
(1)誰が相続人になるかを確定させる調査
相続人調査とは、「被相続人の相続人は誰なのか?」を戸籍謄本等で確認する作業です。
たとえ「被相続人の配偶者である自分と子どもしか、相続人(法定相続人)はいない」と安心していても、被相続人に次のような相続人のいる場合があります。
- 実は被相続人に離婚歴があり、前婚の配偶者との間に子どもがいた
- 被相続人が愛人を妊娠させ、愛人との間にできた子どもを認知していた
- 被相続人が自分の孫や甥姪と養子縁組をしていた
このような事実を知らないままだと、当該相続人との間で深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
そのため、被相続人の出生〜死亡までの全ての戸籍謄本等を取り寄せ、相続人を調査しなければいけません。
(2)確認する戸籍について
相続人は誰になるのかを調査する場合、全ての続柄が記載されている「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」の取得が必要です。
一方、戸籍抄本(戸籍個人事項証明書)を取得しても、全ての続柄は確認できません。
戸籍謄本には次の3つがあります。
- 戸籍謄本(現在戸籍・現戸籍):一般的な戸籍謄本で、現在戸籍に人が入っており使用されているもの。
- 除籍謄本:戸籍内の人が結婚・離婚・死亡等が原因で誰もいなくなり、閉鎖されたもの。
- 原戸籍(改製原戸籍):戸籍電子化・法改正等により戸籍が改定され、使用されなくなった古い戸籍。
戸籍謄本(現在戸籍・現戸籍)には被相続人とその配偶者、結婚していない子どものみ記載されており、一世帯分の最新情報しか確認できないので注意しましょう。
また、法改正で戸籍が切り替わるとき、過去の記録の全部を引き継ぐわけではありません。
改正前の離婚・子どもの認知・養子縁組・除籍情報を調べるには、原戸籍(改製原戸籍)も必要です。
相続人調査の必要性
相続手続きを円滑に進めるため、相続発生後なるべく早く相続人の調査を開始しましょう。
ここでは相続人調査の必要性を3つ取り上げます。
(1)遺産分割協議を行う場合は相続人全員の同意が必要
被相続人の遺言書が見つからず、遺産分割協議を行う場合は相続人全員の参加が必要です。
複数の相続人がいる場合、相続人の誰がどんな相続財産を引き継ぐのか話し合わなければいけません。
この遺産分割協議は相続人が一人でも欠けていたら無効となってしまいます。
相続人が全員揃っていないのにもかかわらず遺産分割協議をした場合、もう一度やり直す事態になり、相続手続きをスムーズに進められなくなります。
そのため遺産分割協議前に相続人調査を行い、相続人を確定させる必要があるのです。
(2)家族の知らなかった相続人がいる場合もある
相続人調査で、まったく家族の予想しなかった相続人が見つかる可能性もあります。
例えば被相続人である夫が妻以外の女性(愛人)との間に子ども(隠し子)をつくり、その子ども(隠し子)を認知したケースです。
夫が認知すれば、戸籍に新しく「認知」の欄が設けられ、認知日・認知者の氏名・認知者の戸籍が記録されます。
つまり、被相続人の戸籍をみると、認知された子どもの存在がわかるわけです。
認知された子どもにも相続権があるので、遺産分割協議に参加させる必要があります。
(3)相続手続きで戸籍の提出が必要
相続手続きでは被相続人の戸籍謄本の他、相続人全員の戸籍謄本の提出が求められます。
戸籍謄本の提出が必要なのは主に次のような手続きです。
- 金融機関(銀行)での被相続人の預貯金引出
- 法務局で被相続人が所有していた不動産の名義変更(相続登記)
- 相続税申告
そのため、相続人調査で相続人全員を確定させ、その全員に協力を求める必要があります。
相続人調査の手順について
相続人調査の基本的なプロセスは以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する
- 取得した被相続人の戸籍謄本を確認する
- 相続人の戸籍謄本を取得する
それぞれのプロセスについて説明します。
(1)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する
被相続人の最後の本籍地にある市区町村役場で、被相続人の戸籍謄本等を取得しましょう。
「相続が発生したので、被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本を取得したい」と窓口で伝えれば、市区町村役場にある全ての戸籍謄本を取得できます。
もし「1つ前の本籍地」が記載されている箇所を見つけたら、続いてその本籍地にある戸籍謄本も取得しましょう。
戸籍謄本を申請するのは被相続人の配偶者や直系の血族(子や親)が一般的です。
それ以外の人も申請はできるものの、配偶者や直系の血族にあたる人から委任状を取得する必要があります。
申請時には手数料がかかり、戸籍謄本(現在戸籍・現戸籍)は450円、除籍謄本・原戸籍(改製原戸籍)は750円です。
窓口申請・郵送申請のために提出する書類は次の通りです。
- 戸籍交付申請書:市区町村役場窓口またはホームページで取得可能
- 申請者の戸籍謄本:被相続人との相続関係を証明するために必要
- 申請者の印鑑
- 【郵送申請の場合】申請者の本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等)、返信用封筒(切手貼付済)、手数料分の定額小為替(郵便局で入手可)、申請者の戸籍謄本はコピーも可
その他、2024年3月1日から戸籍謄本等の「広域交付」申請が可能となりました。
この広域交付制度を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場窓口でも、戸籍謄本・除籍謄本を請求できます。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 広域交付の申請は窓口申請のみで、郵送による請求はできない
- 申請できるのは被相続人の配偶者や直系の血族(子や親)で、代理人は申請不可
- 申請者は運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等、本人確認書類の提示が必要
- コンピュータ化されていない戸籍謄本等は取得不可
なお被相続人の本籍地がわからない場合、最後の住所地にある市区町村役場から「住民票の除票」(手数料:200〜300円)を取得すれば、本籍地が確認できます。
(2)取得した被相続人の戸籍謄本を確認する
被相続人の戸籍謄本等を取得したら、相続人にあたる人を確認していきましょう。
死亡時から遡って調査していくのがポイントです。
調査していく過程で、例えば戸籍謄本の認知欄に聞いたこともない人の名前が記載されていたなら「隠し子」の存在がわかります。
また、身分事項欄に孫や甥姪と縁組した旨が記載されているなら、孫や甥姪を「養子」にしていた事実が判明します。
戸籍謄本等を確認し、相続権を有している人がいるとわかったら、速やかに連絡を取り、遺産分割協議への参加を促しましょう。
(3)相続人の戸籍謄本を取得する
戸籍謄本の収集は相続人全員と連絡を取り合い、その協力のもとで取得するのが一般的です。
ただし、次のようなケースでは、既に亡くなっている人の戸籍謄本も収集する必要が出てきます。
- 被相続人より先に子どもや孫(代襲者)が亡くなっていた→子どもや孫(代襲者)の出生~死亡までの連続した戸籍謄本を取得する
- 被相続人に子どもや孫(代襲者)がおらず、親の片方が被相続人より先に亡くなっている→親の片方の死亡が記載されている戸籍謄本
- 被相続人に子どもや孫(代襲者)がおらず、両親は被相続人より先に亡くなっているものの、祖父母の片方が存命している→亡くなった両親・祖父母の戸籍謄本
- 被相続人に子どもや孫(代襲者)がおらず、直系尊属(両親・祖父母)は既に亡くなっている→両親の出生~死亡までの連続した戸籍謄本、直系尊属の死亡が記載された戸籍謄本、被相続人より早く亡くなった兄弟姉妹がいるときはその兄弟姉妹の出生~死亡までの連続した戸籍謄本
相続人調査の注意点と対応方法
自分で相続人調査を行おうとしても、必ずしもスムーズに調査が進むとは限りません。
「自分にはとても調査なんて無理」と思ったら、士業専門家に相談するのもよい方法です。
(1)自分で相続人調査をするとスムーズに進まないケースも
ケースによっては、膨大な数の戸籍謄本を集める必要が出てくるので注意しましょう。
被相続人の戸籍謄本が同じ市区町村役場で取得できるなら、スムーズに調査は進められるものの、ほとんどのケースで複数の市区町村役場からの取得を必要とします。
広域交付制度を利用すれば戸籍謄本取得の簡略化が図れるものの、コンピュータ化されていない戸籍謄本等は取得できない点に注意が必要です。
相続人調査で想定外に時間と労力を費やし、相続手続きに支障が出る可能性も考慮しておきましょう。
(2)相続人調査に悩んだら士業専門家へ相談しよう!
相続人調査は士業専門家(行政書士、弁護士、司法書士、税理士)に依頼が可能です。
士業専門家であれば、スムーズに相続人調査が進められることでしょう。
相続人調査費用の目安は5万円程度です。ただし、相続人調査だけを請け負うのは行政書士が一般的で、他の士業ではオプションとして依頼可能なケースがほとんどです。
状況に応じて適切な専門家に依頼するとよいでしょう。
- 相続人調査だけを頼みたい場合:行政書士
- 相続人調査だけではなく他の相続人とのトラブルも解決したい場合:弁護士
- 相続人調査だけではなく相続登記も任せたい場合:司法書士
- 相続人調査だけではなく相続税申告も必要な場合:税理士
なお、相続人調査を扱う行政書士以外の士業に依頼すると、相続人調査費用とは別に、依頼した業務の費用がかかる点に注意しましょう。
まとめ
自分でも相続人調査は行えるものの、想定外に時間と労力を費やす可能性があります。
相続人調査がなかなか進まないと、その後の相続手続きに影響が出てしまうことでしょう。
相続手続きをスムーズに進めていきたいなら、事前に行政書士をはじめとした士業専門家と相談し、相続人調査を依頼しておくのもよい方法です。