相続争いの原因と解決法・争いを防止する方法は?

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相続問題

相続争いは、遺産総額や内容、相続人の数にかかわらず、起きる可能性があります。

「多額の遺産はないから」、「兄弟姉妹の仲がよいから」と、無縁に思う方もいるかもしれませんが、関係ありません。

泥沼に陥らないためには、よくある原因と解決法をあらかじめ知っておくことが大切です。

また、生前のうちに対策しておけば、相続争いの勃発自体を防げるでしょう。

この記事では、相続争いの典型的なケースを紹介し、原因と解決法、相続争いを防ぐためにできること、相続争いを解決できない場合の末路などについて解説します。

相続争いは誰にでも起きる

どんなに仲のよい家族でも、相続が発生すると、もめる可能性はゼロではありません。

相続争いは遺産総額や相続人の数に関係なく起きる可能性があります。

裁判所が毎年発表している「司法統計」の令和5年度のデータをもとに詳しく説明します。

(1)遺産総額に関わらず相続争いは起きる

こちらは、令和5年 司法統計年報 3家事編の第52表のデータを元にした、遺産総額別の調停申し立て件数の割合を表したグラフです。

遺産総額別調停件数

令和5年 司法統計年報 3家事編を元に作表

遺産総額1,000万円以下の事案が3割以上、5,000万円以下の事案と合わせると全体の8割近くを占めています。

遺産総額にかかわらず遺産分割調停の申し立てが行われていることがわかります

(2)遺産の内容にかかわらず相続争いは起きる

こちらは、同第52表のデータを元に作成した遺産の内容別に調停申し立て件数の割合をまとめたグラフです。

遺産の内容別調停件数

令和5年 司法統計年報 3家事編を元に作表

一般的に「不動産があると相続争いが起きやすい」といわれていますが、遺産が現金のみの事案が2割近くを占めています。

このことから、相続争いは遺産の内容にかかわらず起きることがわかります

(3)相続人の数にかかわらず相続争いは起きる

こちらは、同第46表のデータを元に作成した、当事者の人数別の調停件数を表したグラフです。

当事者の人数別調停件数

令和5年 司法統計年報 3家事編を元に作表

一般に、相続人の数が多いほど相続トラブルが起きやすいといわれていますが、相続人が3人以下の事案が過半数を占めています。

このことから、相続人の数にかかわらず起きる可能性があることがわかります

相続争いの原因と解決法

相続争いを避けるには、よくある原因とその解決方法を知っておくことが有効です。

相続争いの典型的な原因とその解決策について説明します。

(1)遺産分割の割合で争いになる

「長男だから」「事業を後継するから」などという理由で、不公平な遺産分割を主張する人がいて、争いになるケースはよくあります

このような場合、法律で定められた法定相続分に従って分割するのが原則なので、まずは法定相続分について理解してもらいましょう。

「法律で定められているなら」と納得してもらえる可能性もあります。

しかし、法定相続分について説明しても相手が受け入れない場合は、司法の場で話し合うしかありません。

家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。

(2)不動産の分割で争いになる

不動産は分割方法がわからないために争いになるケースの多い財産です

そのため、下記の分割方法を知っておくことが有効である場合も多いでしょう。

【不動産の分割方法】

①現物分割:土地を分筆して分ける、1筆ずつ相続する、などそのままの形で相続する

②換価分割:不動産を売却し、その売却金を均等に分割する

③代償分割:特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う

④共有:相続人全員の共有名義にする

どの方法を採用するかを検討した上で遺産分割を進めましょう。

話がまとまらなければ、専門家に相談したり、家庭裁判所に調停を申し立てたりするとよいでしょう。

(3)寄与分を主張する人がいる

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加のために貢献した相続人が、その貢献度に応じて加算してもらえる相続分のことです

親の介護をした相続人などが主張できますが、加算金額の算出が難しいために合意に至らないケースが多いでしょう。

このような場合は、専門家に相談するか家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのが有効です。

(4)生前贈与を受けた人がいる

生前贈与分は「特別受益」として捉えられ、遺産に含め直して分割を考えるのが原則です

しかし、他の相続人が特別受益であると主張しても、本人が認めず、争いに発展するケースが多くあります。

解決策としては、特別受益であるという証拠を用意することが有効です。

それでも収束しなければ、専門家への相談や家庭裁判所への調停申し立てを検討しましょう。

(5)相続人同士の仲が悪い、疎遠で話し合いができない

関係が悪かったり疎遠であったりするために、相続人同士での話し合いが進められないというケースもよくあります

この場合は、まずは書面でのやり取りを試みるとよいでしょう。

直接話し合うよりは冷静に対応できるため話がまとまる可能性が高まります。

それでも難しい場合は、専門家への依頼や家庭裁判所への調停申し立てを検討しましょう。

(6)内縁関係の配偶者や元配偶者の子どもなどがいる

内縁の配偶者や元配偶者の子ども、隠し子などがいるために遺産分割でもめるケースもあります

子どもについては、血縁関係がある以上、相続人です。他の子どもと同様に相続権があり、法定相続分も同じです。

一方、内縁の配偶者には相続権がありませんが、内縁の配偶者が相続を主張し、争いに発展するケースもあります。

これらの争いを防ぐには、故人が生前に遺言を用意したり、生前贈与をしたりしておくなど何らかの対策を取っておくことが有効です

(7)遺言書の内容に納得できない人がいる

基本的に、遺言書に書かれた内容が優先されるため、従うしかありません

しかし、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分請求権があります。

納得できない場合は、遺留分侵害額請求をして、少しでも遺産を分割してもらうとよいでしょう。

(8)遺言書の有効性を巡って争いになる

認知症などで判断能力が疑わしい状態で作成されたなど、遺言書の有効性について争いが起きるケースもあります

この問題は判別が難しいケースが多く、当事者同士で解決に至る可能性は低いでしょう。

解決するためには、遺言無効確認請求訴訟を起こすという方法があります。

(9)事業承継を巡って争いになる

事業承継は複雑であり、さまざまなトラブルが起きる可能性があります

生前のうちに対策をしておかなければ、後継者に遺産を集中して相続させたい人と、法定相続分通りの分割を望む人とで争いが起きるなどのトラブルが発生する可能性があるでしょう。

トラブルを防ぐためには、早めに専門家に相談し、適切な対策を講じておくことが大切です。

相続争いを防ぐためにできること

相続争いを未然に防ぐためには、被相続人になる方が生前のうちに以下のような対策をしておくとよいでしょう。

(1)元気なうちに家族で話し合っておく

被相続人が元気なうちに家族で話し合っておけば、被相続人の思いや相続人の意見を共有できるので、全員が納得できる相続が実現しやすくなります

その場で出た意見に対して対策をしておけば、トラブルを防げる可能性もあるでしょう。

正月や盆など親族が集まるタイミングで、話し合っておくことをおすすめします。

(2)遺言書を作成しておく

相続争いの防止に最も有効といえるのが、遺言書を作成しておくことです

遺言は故人の最後の意思表示であり、何より優先されます。

その内容通りの相続が実現するため、相続人同士で争いが起きる可能性を低減できます。

(3)生前贈与をしておく

特定の人に遺産を相続させたいなら、生前贈与をしておくとよいでしょう

ただし、遺産分割時に特別受益として持ち戻されたり、遺留分請求をされたりする可能性があることには注意が必要です。

できれば専門家に相談しながら進めるのが望ましいでしょう。

(4)家族信託を利用する

家族信託とは、ご自身が認知症になるなどして判断能力を喪失した際に、財産の管理などを家族に任せられるサービスです。

ご自身が亡くなった後の財産の行方も指定できるため、相続対策として活用するのもよいでしょう

ただし、複雑な仕組みであるため、専門家に相談することをおすすめします。

相続争いを解決できない場合の弊害

相続争いが長引き、遺産分割協議が進まなければ以下のような弊害があります。

(1)遺産を有効活用できない

遺産分割協議がまとまらなければ、遺産の活用ができません

不動産や株式などは、売却の好機を逸してしまう可能性があるでしょう。

維持費がかかり、無駄な支出も増加します。

争いが長引くほど、損失が大きくなるリスクが高まるのです。

(2)親族間の仲が悪くなる

相続争いが長引くと、相続人同士の仲が悪くなるリスクも高まります

相続をきっかけに絶縁してしまうケースも珍しくありません。決定的な溝ができる前に解決することが大切です。

(3)適切な遺産分割が実現しない可能性が高まる

2021年の民法改正により、特別受益や寄与分は相続開始から10年間しか主張できなくなりました

遺産分割協議が長引けば、親の介護や経済的援助をしていた人は寄与分を主張できなくなる可能性があります。

本来よりも少ない額しか相続できなくなるかもしれません。

また、親の生前に多額の財産の贈与を受けていた人が、遺産分割協議で他の相続人と同等の分割を主張し、不公平な相続になる可能性もあります。

(4)相続税で損をする可能性がある

相続税は相続発生の翌日から10ヵ月以内に申告しなければなりません

期限を守らなければ、加算税や延滞税が課されるだけではなく、小規模宅地の特例などの大幅な節税対策を使えなくなります。

本来よりも高額の相続税を支払うことになるケースもあるので、注意が必要です

ただし、申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、3年以内に遺産分割を完了すれば、後からでも特例を利用できます。

まとめ

相続争いの原因と解決法、相続争いを防ぐためにできること、相続争いを解決できない場合の弊害などについて解説しました。

どのような家族でも、相続争いが起きる可能性はゼロではありません。

しかし、相続についての正しい知識や解決策を知っておくこと、可能であれば予防策を講じておくことで、スムーズに収束できる可能性が高まります。

家族で相続に備え、円満な遺産分割を実現してください。

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