不動産相続の手続き・申請方法と注意点を解説

相続

不動産相続の手続き・申請方法

被相続人の不動産を誰が引き継ぐかは、被相続人が作成していた遺言書や、遺産分割協議などによって決まります。

不動産を引き継いだ相続人は、速やかに不動産相続の手続きを行わなければいけません。

民法・不動産登記法の改正(2024年4月1日以降)で、相続登記の手続きは義務化されているので注意が必要です。

手続きを怠るとペナルティも受ける可能性があります。

この記事では、不動産相続の手続きの方法、必要書類と費用、申請方法と注意点などについて解説します。

不動産相続の手続きの方法

被相続人から不動産を引き継いだ相続人は、速やかに登記手続きを済ませましょう。

登記を済ませれば、他の相続人や第三者に対して不動産の権利を主張でき、不動産取引も円滑に手続きが進められます。

相続登記の手続きには次の3つの方法があります。

  • 窓口申請
  • 郵送申請
  • オンライン申請

それぞれの方法について説明します。

(1)窓口申請

相続不動産の住所地の法務局で登記手続きを行う方法です

担当職員に必要書類等を直接提出するので、迅速に登記手続きを進められることでしょう。

業務取扱時間は平日の午前8時30分〜午後5時15分までです。

なお、土・日曜、祝日、年末年始期間はいずれも休みとなります。

また、書類提出後すぐに手続きが完了するわけではなく、登記の変更(名義変更)には約2日〜1週間かかります。

ホームページ上で各法務局が登記完了予定日を掲示しているので、それを目安に来庁しましょう。

次の手順で進めていきます。

  1. 必要書類を集める
  2. 相続登記の登記申請書を作成・押印
  3. 登録免許税分の印紙を法務局印紙販売窓口やコンビニ等で購入
  4. 登記申請書・必要書類を法務局に提出

後日、登記申請書に押印したものと同じ印鑑を持参すれば、登記識別情報通知書・登記完了証を取得できます。

(2)郵送申請

法務局に来庁する手間も省け、業務取扱時間を気にせず提出できる方法です

郵送先は相続不動産の住所地を管轄する法務局となります。

添付書類を綴じて提出しましょう。

登記申請書を1番上にして次の順番でまとめます。

  1. 登記申請書・収入印紙貼付台紙
  2. 委任状(代理申請のときのみ必要)、相続関係説明図(戸籍の返却を受けたいとき必要)
  3. 書類のコピー
  4. 返却を受ける書類の原本(こちらは綴じない)

郵送の際は封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と書いて、書留郵便により送付しましょう。

登記完了時、還付希望の書類や登記完了証を郵送で返却してもらいたいときは、宛名を記載した返信用封筒・書留郵便のための郵券を同封します。

また、登記識別情報を郵送で交付してもらいたいときは、本人限定受取郵便等による方法となるため、「書留料金+210円」の郵券が必要です。

(3)オンライン申請

自宅にいながら、ほとんどの登記手続きを行える方法です

また、法務局に来庁する手間が省け、申請書に誤りを見つけた場合もオンライン上で修正できます。

登録免許税の納付は、インターネットバンキングを利用して電子納付を行うことが可能です。

ただし、申請用総合ソフトのインストールや電子署名(マイナンバーカード等)を準備する必要があります

  1. 事前準備:パソコンに申請者情報の登録・申請用総合ソフトをインストール
  2. 申請書作成・必要書類を集める
  3. 申請情報へ電子署名付与(マイナンバーカード等を取得)
  4. 申請情報送信
  5. 添付書面原本を、法務局に持参か郵送
  6. 登記完了証取得

全ての申請がオンラインで済ませられるわけではなく、添付書面原本を、オンライン申請受付日から2日以内(ただし初日・休日等を除く)に、法務局に持参または書留郵便等で送付する必要があります。

自分で不動産相続の手続きを行う場合の必要書類と費用

不動産相続の手続きを行うときは、さまざまな書類や費用が必要となります。

主に市区町村の役場で書類を取得しなければいけません。

また、手続きのときは、登録免許税の納付に必要な費用も準備しましょう。

(1)手続きの必要書類

登記手続きを進める際には、主に次のような書類が必要です。

  • 登記申請書:法務局の窓口、ホームページで取得可能
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本:手数料1通450~750円(改製原戸籍・除籍謄本)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の除附票:手数料1通200~400円
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本:手数料1通450円
  • 不動産を相続した人の住民票:手数料1通200~300円
  • 固定資産評価証明書:手数料1通300円
  • 収入印紙・切手:郵便局・コンビニ等で取得

戸籍謄本等は、以前は本籍地に請求する必要がありましたが、戸籍法の一部改正により、令和6年(2024年)3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口で請求できるようになりました。

相続人が遺産分割協議を行ったときは、作成した遺産分割協議書および相続人全員の印鑑登録証明書を各相続人の住所地の市区町村役場で取得して、準備しましょう。

手数料は1通に付き200円〜300円です。

遺産分割協議書では相続人全員の押印(実印)が有効とされており、押印した事実を証明するために印鑑登録証明書も添付します。

また、遺言がある場合は遺言書を、代理人が申請する場合は委任状を準備します。

その他、法務局から戸籍謄本等を返却してもらいたいときは相続関係説明図、戸籍謄本等の提出を省きたいなら法定相続情報一覧図も作成しておきます。

(2)手続きの費用

登記手続きを進める際には、種類を取得する手数料として約5,000〜10,000円はかかります

相続人の人数や相続方法によって、費用に差が出る場合もあります。

その他、登録免許税の費用も納めなければいけません。

登録免許税の算定方法は「相続した不動産の固定資産評価額×0.4%」で計算します。

不動産の評価額が高いと納める税金も高くなります。

固定資産評価額と登録免許税の金額を下の表にまとめたので参考にしてください。

固定資産評価額 登録免許税
1,000万円 4万円
1,500万円 6万円
2,000万円 8万円
5,000万円 20万円
1億円 40万円

登録免許税の納付は次のいずれかの方法で行うことができます。

  • 登記申請書を提出するとき収入印紙で納める:収入印紙は法務局の印紙売り場、郵便局やコンビニで購入
  • 高額の登録免許税を納付するときは主に銀行で納付:納付後、取得した領収証書を登記申請書に貼付し提出
  • 電子納付する:オンライン申請時にPay-easy(ペイジー)対応の金融機関で電子納付

不動産相続の手続きの注意点

被相続人の不動産を引き継ぐ相続人が決まったとしても油断してはいけません。

登記手続きを迅速に進める必要があります。

不動産相続手続きの方法がよくわからないからといって放置せず、専門家に相談しながら進めましょう。

(1)不動産相続登記の期限に注意

2024年4月1日から相続登記の義務化が開始され、手続きの期限や違反した場合の罰則も設けられています

期限は相続不動産を得た時期によってそれぞれ異なります。

  • 2024年4月1日以降に不動産を引き継いだ場合:相続で不動産取得を知った日から3年以内
  • 2024年4月1日以前に不動産を引き継いだが、相続登記をしていない場合:原則として2024年4月1日から3年以内

正当な理由がないにもかかわらず、登記・名義変更手続きを行わないと、10万円以下の過料が課せられるので注意しましょう

(2)手続きの方法がわからない場合は専門家に相談を

「不動産相続の手続きがよくわからなくて不安だ」「何回も法務局から修正を求められそうだ」などと感じたら、相続登記の専門家である司法書士に相談しましょう。

司法書士は登記手続きのアドバイスを行うだけではなく、登記申請を依頼すれば、依頼者に代わり登記手続きを行ってくれます。

ただし、相続登記の報酬として約6〜11万円程度の費用がかかる点に注意しましょう

不動産相続の手続きに関するよくある質問

不動産相続の手続きは相続人や被相続人が意図した通りに進まない可能性もあります。

こちらでは手続き等に関するよくある質問に回答します。

(1)不動産を誰が相続するのか決まらないときはどうすれば良い?

「遺産分割で誰も不動産を引き継いでくれない」「相続人の間で不動産の承継を譲らない」という事態が起き、早期の遺産分割が難しいときは「相続人申告登記制度」を利用しましょう。

相続人申告登記を行えば、簡易な申請により、ひとまず相続人としての義務を履行したものとみなされます。

次のような書類を準備し法務局に提出します。

  • 申出書
  • 申出人と被相続人の関係性がわかる証明書:戸籍謄本等
  • 委任状:代理人が手続きを行うとき

申請後は登記官が、申出人(相続人)の住所・氏名等を職権で登記記録に登記します。

ただし、相続人申告登記をしたからといって、申出人(相続人)が自由に当該不動産を売却できるわけではないので注意しましょう。

また、相続人申告登記後、遺産分割協議が成立した時点から3年以内に、正式な不動産の相続人が登記手続きを完了する必要があります。

(2)不動産を誰が引き継ぐかで揉めないための方法を知りたい

被相続人は生前に相続不動産で相続人同士が争わないように対策を講じておきましょう

遺言で不動産の相続人を指定できるものの、他の相続人へも公平に遺産の分配ができるよう工夫しないと、相続開始後に相続人の間で深刻な相続争いが発生するかもしれません。

特に、不動産が多いときは、相続人の間で平等に分けることが難しくなるでしょう。

遺産を平等に分配するためには、生前に不要な不動産を売却し、現金化しておく方法が考えられます。

金融資産にすることで、複数の相続人の間で公平に分けやすくなります。ご自身の体力や判断能力が十分なうちに、不動産会社に相談してみましょう。

まとめ

不動産相続の手続きの方法、必要書類と費用、申請方法と注意点などについて解説しました。

被相続人の遺産分割が全て決まったからといって油断していると、登記手続きの法定期限を経過してしまう可能性があります。

手続きを放置していると、10万円以下の過料を課せられるおそれもあるので注意が必要です。

不動産相続の手続きは窓口・郵送・オンラインのいずれかで行うことができるので、自分に合った方法で進めていきましょう。

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