被相続人の不動産を遺産分割する方法と注意点

遺産分割・財産分与

被相続人 不動産 遺産分割

被相続人が所有していた実家や土地を遺産分割する場合、「どうやって複数の相続人と分割するかわからない」、「遺産が不動産だけだと分割に苦労しそう」などと不安に感じることもあるのではないでしょうか。

特に唯一の遺産が不動産だけという場合は、より慎重に遺産分割の手続きを進める必要があるでしょう。

この記事では、不動産の遺産分割方法、分割の際の注意点について解説します。

不動産の遺産分割はどのように決める?

不動産の遺産分割の手続きは遺言書がある場合、ない場合で異なります。

相続が発生した場合、まずは被相続人の作成した遺言書の有無を確認しましょう。

(1)遺言書が残されていた場合

被相続人の遺言書を見つけたら、遺言の内容に従い不動産を相続するのが一般的です。

遺言書には次の3種類があり、それぞれ確認する場所・公的機関は異なります

  • 自筆証書遺言(被相続人が自筆で作成した遺言):被相続人の自宅等を探して確認(発見したら家庭裁判所で検認する)、被相続人が自筆証書遺言保管制度を利用していた場合は法務局(遺言書保管所)で確認(検認不要)
  • 秘密証書遺言(記載内容を秘密にできる遺言):被相続人の自宅等を探して確認(発見したら家庭裁判所で検認する)
  • 公正証書遺言(遺言者の意思を確認し公証人が作成する遺言):最寄りの公証役場で遺言検索を申し出て、公正証書遺言の検索システムで確認(検認不要)

ただし、遺言書が残されていても、相続人全員の同意を得れば、遺産分割協議で遺言内容と異なる取り決めをしてもかまいません。

(2)遺言書がない場合

遺言書がなく、相続人が2人以上いる場合、遺産分割協議で不動産の遺産分割を話し合いましょう。

不動産をどうするのかが決まったら、遺産分割協議書を作成して相続人全員が署名・押印します。

相続人が複数存在する場合、不動産の相続登記を行う際、法務局に遺産分割協議書を提出する必要があります

不動産相続で遺産分割する4つの方法

複数の相続人がいる場合、不動産を分割する方法は以下の4種類です。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

それぞれの特徴について説明しましょう。

(1)現物分割

被相続人の不動産をそのままの形で各相続人が引き継ぐ分割方法です

相続財産が被相続人所有の土地である場合、その土地を分筆して、それぞれ取得します。

例えば被相続人の土地を3人の子が相続していたなら、土地を1/3ずつ分筆し、各相続人が1筆の土地を所有します。

土地を分割後、相続した土地を処分するのは各相続人の自由です。

ただし、狭い土地では現物分割が行いにくく、相続不動産が建物の場合はまず不可能です。

(2)代償分割

相続不動産を相続人1人が引き取り、他の相続人へ代償金を支払う方法です

具体的な例を挙げながら、代償分割について説明します。

(例)被相続人の遺した6,000万円の価値がある相続不動産を、相続人A・B・Cが代償分割する。

  • 相続人A:不動産全部を取得
  • 相続人B:代償金2,000万円をAから受け取る
  • 相続人C:代償金2,000万円をAから受け取る

代償分割は、相続した土地や建物を利用できる点がメリットといえます。

ただし、実際の不動産を引き継ぐ相続人にある程度の資力がなければ、代償金の支払いが難しいというデメリットもあります。

(3)換価分割

こちらは相続不動産を売却し、売却で得たお金を各相続人に分配する方法です

主に次のようなケースで換価分割を選ぶ場合が多いです。

  • 各相続人は既に独立し住居があり、仮に相続不動産を所有し続けても誰も利用しない
  • 相続不動産がとても離れた場所にあり、そのまま相続するのは不便だ

例えば相続人3人で公平に分割する場合、相続不動産が6,000万円で売却できたなら、3人がそれぞれ2,000万円ずつ取得します。

換価分割なら現金化できるので公平に分けられ、代償分割のように不動産を引き継いだ相続人が、他の相続人に金銭を支払う必要もありません。

ただし、相続不動産が家族にとって思い出深い土地や建物なら、売却に抵抗を感じる相続人もいることでしょう。

(4)共有分割

共有分割とは、相続不動産を相続人の間で共有して分割する方法です

例えば相続人3人がいて相続不動産を共有分割する場合、それぞれ3分の1の割合で不動産を共有名義で取得します。

ただし、共有名義で取得した不動産の変更(不動産全体の売却・大規模改修など)を行う場合、共有者全員の同意が必要になり、一部の共有者のみで不動産の変更はできません。

不動産を遺産分割するときの注意点

被相続人の不動産を含めた遺産に関して、例えば被相続人の配偶者が不動産を引き継ぎ、既に独立した子ども達へ金融資産を引き継がせれば、穏便に遺産分割ができるでしょう。

しかし、被相続人が不動産の他、必ずしも潤沢な金融資産を遺しているとは限りません。

ここでは、不動産を遺産分割するとき起きやすい相続人間のトラブルについて説明します。

(1)被相続人の遺産が不動産だけの場合は揉めやすい

被相続人の預金はごくわずかで、遺産といえば土地や建物しかないというケースに注意しましょう。

広大な土地であれば現物分割で分けられるものの、分割によって狭小になった土地は相続人にとって相続するメリットはないという事情が生じます。

また、既に独立しそれぞれマイホームがあり、被相続人が所有していた建物を相続したくない場合もあります。

被相続人の不動産を誰も欲しがらない場合は、換価分割がベストな方法といえるでしょう

不動産売却に関してわからない部分が多いときは、速やかに不動産会社に相談しましょう。

不動産会社では売却価格の見積もりや、買い手がみつかりやすいかどうかも、不動産売買に携わってきた豊富な知識と経験からアドバイスしてくれます。

(2)不動産を安易に共有分割するとトラブルが発生しやすい

「自分が住まなくとも、自分の生まれ育った家を手放すのは嫌だ」「不動産を売ろうとしても、中心市街地から離れすぎていて買い手はあらわれない」などと考え、共有分割を選ぶ相続人もいることでしょう。

しかし、共有分割の状態を維持したままだと、共有者が増え続け、誰が権利者かわからなくなるリスクがあります

一度不動産を共有分割すれば、次の相続でも「自分の父親や母親がそうしたから」と同じ共有分割を選ぶかもしれません。

共有分割が続くと、以下のような事態が想定されます。

(例)被相続人の不動産を相続人で子A・B・Cが共有分割し、その後相続人Aが死亡した

  • A(死亡)→子である相続人D・E・Fが共有分割した
  • B
  • C

当初、共有者A・B・Cの3人だったものの、生存中のB・Cに加えD・E・Fが加わって5人となり、共有者が2人も増加しています。

このように何世代も共有分割を行い続けると、共有者がどんどん増え、加えて共有者同士が疎遠になると、共有者全員の把握がかなり難しくなってしまうでしょう。

そのうち、不動産は所有者不明となり放置される可能性が高いです。問題が複雑化する前に、共有者全員の同意を得て売却した方がよいでしょう。

不動産の遺産分割で揉めた場合の解決方法

不動産の遺産分割で揉めてしまうと、いつまで経っても相続手続きが進まなくなります。

早期の問題解決のため、いろいろな方法を検討してみましょう。

(1)家庭裁判所で和解を試みる

遺産分割協議で不動産の遺産分割の話がまとまらないときは、家庭裁判所に話し合いの場を移し、合意形成を図る方法が「遺産分割調停」です。

遺産分割調停について知りたい方は以下の表を参考にしてください。

遺産分割調停 内容
調停内容 紛争当事者が調停委員の助言や和解案を通して、和解を目指す
調停場所 相手方のうち一人の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所
主な提出書類

【1.申立に関する書類】

  • 申立書:1通及びその写しを相手方の人数分揃える
  • 事情説明書(遺産分割)・進行に関する照会回答書(遺産分割)
  • 収入印紙:1,200円分

連絡用の郵便切手

主な提出書類

【2.被相続人に関する書類】

  • 被相続人の出生時~死亡時までの戸籍謄本、除籍・改製原戸籍(1通450~750円):本籍地の市区町村役場で取得
  • 遺産に関する証明書:不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券の写し等が該当
主な提出書類

【3.相続人に関する書類】

  • 相続人全員の戸籍謄本(1通450円):本籍地の市区町村役場で取得

※次のいずれかの書類も必要(相続人全員分)

  • 住民票(1通200円):住所地の市区町村役場で取得
  • 戸籍附票(1通300円):本籍地の市区町村役場で取得

なお、ケースに応じて裁判所から追加の書類を要求される場合があるので、指示に従い書類を提出しましょう。

紛争当事者が合意に至った場合、裁判所は「調停調書」を作成します。

一方、調停不成立となった場合は自動的に「遺産分割審判」が開始され、裁判官が判断を下します。

(2)相続トラブルに関わりたくない場合は相続放棄を検討

「他の相続人と揉めてまで被相続人の不動産を相続したくはない」と考えているなら、相続放棄を検討しましょう。

相続放棄について知りたい方は以下の表を参考にしてください。

相続放棄 内容
放棄の効果 自分の相続する権利・義務の一切を放棄できる
申述場所 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
申述期限 自己のため相続の開始があった事実を知ったときから3か月以内
主な提出書類
  • 相続放棄の申述書
  • 申述人の戸籍謄本(1通450円):本籍地の市区町村役場で取得
  • 収入印紙:申述人1人につき800円分
  • 連絡用の郵便切手

※次のいずれかの書類も必要

  • 被相続人の住民票除票(1通300円):最後の住所地の市区町村役場で取得
  • 被相続人の戸籍附票(1通300円):本籍地の市区町村役場で取得

ただし、相続放棄をすると原則として撤回は不可能となるので注意しましょう

また、申述人以外の相続人の相続割合に変化が生じたり、申述人の後順位の相続人が繰り上がったりして、他の相続人が困惑する場合もあります。

義務ではありませんが、相続放棄をする場合、他の相続人や繰り上がって相続人となる人に放棄した旨を通知した方がよいでしょう。

まとめ

被相続人の不動産を相続する場合、相続人間で想定外のトラブルが発生するおそれもあります。

相続人だけで相続手続きを行うのが不安なら、相続に詳しい弁護士へ相談しましょう。

有益なアドバイスが得られる他、万一トラブルが発生しても弁護士を代理人にして、相手方との交渉や調停が可能です。

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