兄弟・姉妹間の相続争いの原因は?よくある事例と解決策

相続

兄弟・姉妹間の相続争い

どんなに仲のよい兄弟姉妹でも、相続を巡り争いになることは少なくありません。

兄弟姉妹の間の関係がこじれるだけではなく、絶好に至るケースもあります。

そのような悲しい結果を招かないためにも、起きる可能性のある争いとその解決策を知っておきましょう。

すでに争いが起きていても、早めに手を打てば、円満に解決できる可能性もあります。

この記事では、兄弟姉妹間でよくある相続争いの原因と解決策、相続争いで兄弟姉妹と不仲になった場合の対処法、兄弟姉妹間の相続争いを予防する方法などについて解説します。

兄弟姉妹間での無用の争いを避けるためにも、ぜひ参考にしてください。

兄弟姉妹間でよくある相続争いの原因と解決策

まずは、兄弟姉妹間でよくある相続争いとその解決策について紹介します。

(1)長男だからと全ての遺産の取得を主張する

戦前の旧民法における家督相続の考え方の影響からか、長男であることを理由に全遺産の相続を主張し、他の兄弟姉妹と対立するというのは昔からよくある争いです。

このケースでは、現行民法における相続の考え方を長男に納得してもらう必要があります

遺産分割は原則として法定相続分に従って行うものであり、兄弟姉妹の相続割合は平等であるとされていることを理解してもらいましょう。

頑なに拒む場合は、専門家に相談するか、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を図りましょう。

(2)不動産の分割についてもめる

遺産に不動産が含まれると、その分割が難しいために争いが起きるケースは非常に多いです

不動産には以下の4つの分割方法があります。これらを知っているだけでも、いくらか話を進めやすくなるでしょう。

【不動産の分割方法】

  • 現物分割:そのままの形で分割する(例:土地を分筆して相続する、建物を1棟ずつ相続する)
  • 代償分割:特定の相続人が単独で相続する代わりに、他の相続人へ代償金を支払う
  • 換価分割:不動産を売却し、売却金を分ける
  • 共有分割:不動産を相続人全員の共有名義とする

どの分割方法を選ぶべきか判断が難しい場合は、専門家に相談することをおすすめします。

(3)葬儀費用の負担をめぐってもめる

喪主として葬儀費用を負担した長男が、遺産分割においてその分の上乗せを求めるものの、他の兄弟姉妹が認めず、争いに発展するケースもあります。

葬儀費用の支払いについての法律上の定めはありません

喪主が負担して当然とする説もあれば、相続人全員で負担すべきという説もあります。

そのため、扱いは相続人全員で話し合って決めるしかありません。

話がまとまらない場合は、専門家に依頼するか、地方裁判所に訴訟提起をして裁判所の判断を仰ぎましょう。

(4)親から生前贈与を受けた兄弟姉妹がいる

親の生前に多額の財産を譲り受けたにもかかわらず、相続においても平等な分割を主張する兄弟姉妹がいて、争いに発展するケースもよくあります。

生前贈与は「特別受益」として遺産分割時に加味されるのが原則です

他の相続人が証拠を提示し、特別受益であると認めさせることが有効でしょう。

それでも本人が認めない場合は、専門家に相談するか、家庭裁判所への遺産分割調停の申し立てを検討しましょう。

(5)寄与分を主張する兄弟姉妹がいる

介護や経済的支援によって、親に対して特別な貢献をした場合、「寄与分」として相続分の上乗せを主張できます

しかし、その具体的な金額の算出が難しいために争いが起きるケースは少なくありません。

話し合っても埒があかない場合は、専門家への相談か家庭裁判所への調停申し立てを検討するとよいでしょう。

(6)遺産の内容を開示しない

親と同居していた兄弟姉妹がいる場合、その人が財産を管理していることが多いです。

遺産分割の際に親の財産を管理していた兄弟姉妹に、財産の開示を求めることになりますが、応じないために争いに発展するケースもあります

どうしても応じない場合は、専門家に相談するか家庭裁判所の調停手続きを利用するしかありません。

万が一、使い込んでいる場合は、損害賠償や不当利得返還を求めて裁判を起こすことになります。

(7)遺言の内容が不公平だったために争いになる

親が残した遺言の内容が不公平であるために、兄弟姉妹で争いが起きることもあります

しかし、遺言書が残されていれば、原則としてその内容に従わなければなりません。

少しでも分割してもらうには、遺留分侵害額請求をする方法があります。

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に法律で認められている、最低限獲得できる遺産の割合です。

具体的な金額を算出の上、請求しましょう。

(8)知らない兄弟姉妹が現れる

故人に隠し子がいてトラブルになるケースもあります

隠し子であっても、故人の子どもである以上、他の兄弟姉妹と同様に相続権があり、法定相続分も変わらないので、通常通りに遺産分割を行いましょう

最も困るのが遺産分割協議後に新たな相続人が発覚することです。

この場合、せっかく決まった遺産分割内容は無効になってしまいます。

そのような事態を避けるためにも、遺産分割協議を始める前に、相続人調査をしっかり行ない、法定相続人が誰かを明確にしておきましょう。

(9)兄弟姉妹の配偶者が口を出してもめる

兄弟姉妹本人ではなく、その配偶者が口を出してきて争いに発展する場合もあります

部外者なので、他の兄弟姉妹が嫌悪感を抱き、こじれるケースも少なくありません。

解決が難しい場合は、専門家に依頼するか家庭裁判所に調停を申し立てるなどして、第三者に入ってもらうのがよいでしょう。

(10)音信不通の兄弟姉妹がいて遺産分割が進まない

遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、連絡先がわからない兄弟姉妹がいる場合は遺産分割協議を進めることができません

この場合は、戸籍附票や住民票を取得して、現住所を調べましょう。

現地まで赴いても構いませんが、手紙を送ればリアクションが返ってくる可能性もあります。

どうしても行方がわからない場合は、不在者財産管理人を選任すれば遺産分割協議を進められます。

裁判所の公式サイトの以下のページを参考に申し立てをするか、専門家に相談して対応しましょう。

参考:不在者財産管理人選任(裁判所公式サイト)

相続争いで兄弟姉妹と不仲になった場合の対処法

相続が発生すれば、遺言書が残されていない限り、遺産分割協議は必ず行わなければなりません。

相続人同士の仲が悪く、話し合いができなくなった場合は、第三者や裁判所、専門家の力を借りて解決しましょう。

相続争いで兄弟姉妹と不仲になった場合の具体的な対処法について説明します。

(1)遺産分割には全員の同意が必要

遺産分割協議は必ず相続人全員で行わなければならず、全員の同意がなければ成立しません

一人でも欠けている場合、その協議自体が無効となります。

また、協議で決まった内容は、遺産分割協議書に記載しますが、そこには全員の署名、捺印が必要です。

「連絡をとりたくない」、「顔を合わせたくない」などという感情的な壁がある場合でも、法的な手続きを進めるためには全員の協力が不可欠だということを理解して、話し合いを進める工夫をしましょう。

(2)第三者を含めて話し合う

当事者だけでは感情的になってしまう場合は、他の親戚に同席してもらったり、仲介したりしてもらえるよう頼んでみましょう

親戚や共通の知人が間に入ることで、お互いに冷静さを保ちながら話を進められる可能性が高まります。

第三者がいることで、感情的な衝突を和らげるだけではなく、話し合いの進行をスムーズにする効果も期待できます。

また、第三者が提案やアドバイスをすることで、新たな視点が加わり、合意点が見つかりやすくなることもあるでしょう。

(3)家庭裁判所に申し立てをする

当事者同士での話し合いに限界を感じるなら、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう

調停とは、裁判官の他、調停委員という専門家が間に入って、もう一度話し合いをする手続きです。

調停委員は、相続問題に詳しい法律や税務の専門家であり、当事者双方の意見を聞いた上で、適切な解決策を提案してくれます。

調停では当事者同士が直接顔を合わせる必要がないため、感情的な負担を軽減できる点もメリットといえるでしょう。

さらに、法的な手続きに基づいて進行するため、協議内容が確実に記録され、後々のトラブルを防ぐことができます。

調停が不成立となった場合には、裁判へと進むことも可能ですが、調停の段階で問題が解決するケースが多いです。

(4)専門家に相談する

感情的な対立が深刻な場合、弁護士や司法書士などの専門家に相談してもよいでしょう

特に弁護士に依頼すれば、ご自身に代わって他の相続人と交渉してもらえます。

連絡も全て弁護士を通すことになるため、直接的なやり取りを避けられ、精神的な負担が軽減するはずです。

専門家に相談する際は、相続財産の一覧や家族構成を整理しておくなどの事前準備を行うと、スムーズに対応してもらえるでしょう。

兄弟姉妹間の相続争いを予防するには

相続人同士の争いが起きないようにするには、相続される側が生前に以下のような対策を講じておくことが効果的です。

  • 遺言書を作成しておく
  • 遺言執行者を指定しておく
  • 財産目録を作成しておく

特に遺言書の作成は有効です

遺言があれば、その内容が優先されるため、遺産分割協議を行う必要がありません。

争いが起きる可能性も低減できるでしょう。

遺言内容を実現してくれる遺言執行者を指定しておけば、さらに安心です。

また、財産目録を作成しておけば、遺産の内容が明確になるため、使い込みなどの不正を防げます。

相続人同士で妙な憶測が起きることもなく、トラブルの防止に役立つでしょう。

まとめ

兄弟姉妹間でよくある相続争いの原因と解決策、相続争いで兄弟姉妹と不仲になった場合の対処法、兄弟姉妹間の相続争いを予防する方法などについて解説しました。

どんなに仲のよい兄弟姉妹であっても、相続が発生すると争いが起きる可能性があります。

相続をきっかけに兄弟姉妹の仲に深い溝ができないようにするためにも、相続に関する正しい知識を身につけておくことが大切です。

また、争いが起きた場合は、早期解決を図るためにも、早めに専門家に相談することをおすすめします。

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